プッシュからプル型の流速制御

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SCM超ルール

プッシュからプル型の流速制御

大きく分ければSCMはプル型、プッシュ型に分けられる。BTO(受注組立)やCRP(連続補充計画)などはプル型のSCM手法、MTS(メイクツーストック:見込み生産)は工業時代の大量生産パラダイムのプッシュ型SCM手法と言える。流速制御の視点から言えばメーカー、卸、小売業界のサプライチェーンのどのポジションでビジネスをしているか、どんな商品を扱っているか、業界の環境として競合はどのような武器を持っているかによってどんな流速制御のSCM手法を用いるか検討しなければならない。

 まずSCM成功事例で有名なデルコンピュータは従来見込み生産(MTS)であったパソコンをBTO(受注組立)にすることで販売速度に生産速度を合わせた。すなわち見込み生産では売れない製品を作るがBTOにすると売れない製品を作らない。又売れる製品は必ず作る。売れる速度と作る速度が1週間単位に測定すれば同じになり、需要に引っ張られて生産するのでプル型のSCMという。

 では日用雑貨や飲料など必要な時が買いたいときである製品は見込み生産で在庫を持つしかない。そして生産したモノが同じ月や週に売れるとは限らない。このような受注生産のように完全なプル型の供給システムは作れない場合はどんなプル型のSCMがあるか。

 この場合売れた在庫分だけを補充供給するCRP(コンテイニュアス・レプレニッシュメント・プログラム)という連続補充計画を多頻度に行うことで変動する需要に供給を合わせる。売れた在庫を補充するということは下流の需要に引っ張られた補充供給である。スーパーマーケットなどの量販店では定番品として売れ行きに変動の少ない商品と特売品という特別企画のパッケージや特別デスカウントキャンペーンなどで大きく変動する製品群がある。CRPは発注されて出荷するのではなく自社の納入した製品の在庫をみて減った在庫分をメーカー側が自主的に行う企業間コラボレーション(協業)のSCM手法と言える。日用雑貨メーカーのP&Gと世界最大の小売店ウオルマ−トのコラボレーションはBPR(業務改革)成功テーマとして有名である。ウオルマ−トの店舗在庫をPOSデータでリアルタイムで把握し補充生産のためのデータがEDIを通じてP&Gの生産計画の入力になる。店頭の販売速度と工場の生産速度をシンクロナイズ(同期化)する高度な手法である。

図3

サプライチェーンの中で小売や生産、物流の各機能分担を会社組織や業種を超えて業務速度を同期化するコラボレーションが全体の流速を上げる。

 その考え方はセブンイレブンのベンダーシステムで生産物流との協業、チームマーチャンダイジングにも、ユニクロなどSPA(製造小売)などのサプライチェーンマネジメントの経営手法にも活かされている。すべてに共通するのは1社ですべてを完結する垂直統合のビジネスモデルではないにもかかわらずメーカーと卸と小売の間に商流・物流の壁を作らないことである。リベートなどのボリューム割引で押し込み販売したり、返品自由の安易な仕入れと販売が在庫を過剰に持たせることは言うまでもない。

 顧客起点、サプライチェーンの最終消費者起点でサプライチェーンの関係者が自分の業務速度を加速・減速して全体でシンクロナイズすることがキャッシュフローを早くする。

サプライチェーンの部分最適、分断された効率はサプライチェーンの目標であるキャッシュフロー貢献利益などの全体目的に向ってベクトルがバラバラで連鎖業務の速度が揃っていない。プル型の流速制御とは、末端の需要を起点にした速度制御のシンクロナイゼーションで速度ベクトルをキャッシュフローに揃えることである。流れを切らさないで澱みをなくすことである。

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