ロジステックスを経営戦略課題とするSCM

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SCM18の法則

ロジスティクスを経営戦略課題とするSCM

20世紀の工業時代においてロジスティクスは製造業にとっても流通業にとっても企業の競争力を決めるコア・コンピタンスとはみなされなかった。製品開発や生産・販売・マーテイングなどのプロセス中心に経営改革が語られて来た。SCMとはモノの流れを扱うロジスティクスを連鎖業務(サプライチェーン)全体の経営論の視点から見たものである。筆者はサプライチェーンを連鎖する業務と業務の間にあるロジスティクスのテーマである「在庫」の連鎖として捉えることを提案している。(「サプライチェーン18の法則」日本経済新聞社)

在庫は業務と業務の繋ぎであり連鎖する連鎖業務の間に挟まれて「表の世界(業務:プロセス)」に対して「裏の世界(在庫:ストック)」と言っても良い。サプライチェーンの経営全体最適の利益スピードをマネジメントするためには「裏と表」の世界を同時に照らさなければ理解できない。モノとしての在庫の本質を捉えることは利益スピードを上げるサプライチェーンの設計には欠かせないと考えている。資材在庫は調達と生産の間に、仕掛在庫は多くの生産工程の中で前工程と後工程の間に、製品在庫は最終工程と売上出荷業務の間にあって前後の業務速度差によって増大したり減少したりしている。「在庫」は連鎖する「業務プロセス」に乗ってより完成度の高い「在庫」になるためにサプライチェーン(バリューチェーン)を移動する。

ドーキンスの著書『遺伝子の川』(原題:River Out of Eden,垂水雄二訳,草思社)の中で,「どのようにして生命は進化するのか?」についてダーウインと違った視点で語っている。ダーウィンは生物個体の見地から進化や自然選択を考察したが,ドーキンスは個体ではなく,彼の言う「遺伝子の目から見た」視点で生命の神秘を説明している。ドーキンスの主張によると,生物の中の遺伝子は「利己的」で,彼らの宿主(ドーキンスは「生存機械」と呼んでいる生物個体)を,「遺伝子の乗り物」として自己の繁殖に利用している。

ダーウインとドーキンスの視点の対比はサプライチェーンを語るときの連鎖業務と在庫の対比と似ている。近代的経営学は業務プロセスの見地から業務改革や経営改善を考察していたが、サプライチェーンは業務プロセスではなく、「在庫の目から見た」視点で経営改善をしようとしている。(資材,仕掛、製品などの)在庫は,彼らの宿主である(生産や販売の)業務プロセスを、より付加価値の付いたモノに向ってリードタイムを経過してキャッシュに変換される。微生物から高等動物まで生物固体の多様性に比べれば遺伝子はどの生物固体にも共通しているように、企業は業種や規模に関わらず「在庫」はキャッシュというどの企業でも共通の価値から成り立っている。在庫はキャッシュであり時間である。

 さて、このように在庫の本質からSCMの基礎的理解のために著した「サプライチェーン18の法則」(拙著、日本経済新聞社2000年1月)の主旨の概略を述べる。従来の物流業のビジネスモデルから見ると非常識と見える点があるかもしれないが21世紀は運送業・製造業・流通業の垣根が無くなる方向でビジネスモデルは進化していくことを考えると可能な限り多様な見方が必要になってくる。読者の皆様がどの業界に属されようとこれからの企業戦略作りのヒントになればと考えている。

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