スピードがコア・コンピタンスになる

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サプライチェーンそれぞれの選択

第4章金型等生産材メーカーの場合

スピードがコア・コンピタンスになる

生産財メーカーにとってのスピードは、社内のみでなくアウトソーシングの対象でもある社外を含む人的・物的経営資源のシンクロナイズドオペレーション(同期的連動)を可能にするプロジェクトマネジメントの巧拙で決まると言ってよい。生産財の場合、顧客満足とは顧客のメークマネー(金儲け)にどれだけ貢献するかが自社のメイクマネーにつながる。すなわち顧客満足(CS)とサプライチェーンマネジメントは密接に関係している。

図2

顧客の利益貢献のために価格交渉しかないようでは、相手を儲けさせることは自社が損をするだけか、自社が儲けると顧客が損をするという対立の関係になってしまう。スピードが顧客の利益になることを戦略的に認識することは、サプライチェーンマネジメントの切り口から見ると自社も顧客も利益を上げる関係(WIN-WIN:両社とも勝利)になる。生産財は顧客にとって連鎖する業務(サプライチェーン)の一部となり、どの業務もサプライチェーンのスループット、すなわちキャッシュフローを決定するボトルネックになる可能性を持つ。どんな生産財であっても納期の遅れが顧客の供給連鎖オペレーションの機会損失、すなわち生産・販売などの経営活動の操業時間喪失に影響する可能性をもっている。従来契約納期に記載されていても、この時間損失を金額に換算することをまともに取り上げることをしてこなかったのは、製造業の経営課題が時間よりもコストダウンに焦点が当てられてきたことと関係がある。

サプライチェーンを構成する投資金額総計が、例えば50億円でその一部をなす300万円の金型の供給遅れがあるとしよう。このサプライチェーンのスループットが1日平均5,000万円<年間稼動日200日=年商100億円>とすれば、この金型がボトルネックになっている場合の1日の納期遅れによる機会損失は5,000万円、2日遅れであれば1億円、5日間の遅れは2億5,000万円になる収益構造のメカニズムがある。ところが多くのケースでボトルネックの認識が不明確になって、300万円の価格交渉で上下10%<±3万円>の議論に明け暮れている。あるいはボトルネックの認識があっても1日の損失はサプライチェーン総投資50億円の1日分の非稼動による金利コストの損失位にしか考えない。我々はコストですべてを計算する癖がついている。

図3

サプライチェーンの経営資源の調達スピードとそれによる資材・部品・製品の流れのスピードを上げることは、企業にとっては運転資金の回転スピードを上げる要因である。生産財の場合、コンセプト設計から量産・販売・納入までのリードタイム(タイム・ツー・マーケット)は経営のコア・コンピテンシー(中核的能力)であることは疑いない。このスピードが生産財の顧客にとって柔軟にしてダイナミックな市場への対応を可能にする。顧客ニーズの迅速な把握、競合の動きへの素早い対応によって素早くマーケテイング・ポジショニングの変更を可能とする。そしてそれを可能にする能力を実は金型メーカー始めとする日本の生産財メーカーが世界の多くの製造業に提供している。金型の日本市場での規模は5,000億円程度だが、世界市場の約40%は日本のメーカーが占めている。生産財として多くの業種でサプライチェーンの経営資源となって経済活動に貢献している物量規模は数千兆円を下ることはないであろう。生産財の時間価値、スピードは顧客にとって計り知れない価値があり、その事実に基づいてマーケテング活動を含めたコア・コンピタンスにすることが次世紀に勝ち残れる条件と言っても過言ではない。

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