金型など生産材メーカーにとっての機会と脅威

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サプライチェーンそれぞれの選択

第4章金型等生産材メーカーの場合

金型など生産材メーカーにとっての機会と脅威

金型・工具・工作機械など生産財メーカーの製品は、サプライチェーン上のポジショニングで見ることにより、どのようにビジネスの機会が広がるだろうか?

まず製品として二つの特徴を持っている。
第一に、その生産財は、加工対象とする素材から部品、完成品への付加価値連鎖(バリューチェーン)の一部を担う。すなわちサプライチェーンから見ると生産財は人的資源とともに、連鎖するそれぞれの業務(オペレーション)を司る経営資源である。
そして第二に、生産財そのものを製品として見たサプライチェーンがある。

図1

この第一の視点から生産財メーカーの事業機会を探索することは興味あるアプローチである。サプライチェーンでみる事業戦略的重要性は本連載で何度も述べているが、顧客満足の視点からサプライチェーンを再構成することである。

その1つに連鎖する業務の燐接する業務を巻き込むインテグレーションのソルーションへの展開がある。自動車部品のモジュール化でモジュール・メーカーに単品部品から隣りの複合部品への展開といった可能性が考えられたように、生産財は隣りの業務を含む「複合業務」の生産財が考えられないか。ポイント・ソルーションからライン・ソルーションへの顧客満足視点による事業機会の拡大である。金型メーカーにとっては顧客の複数製品混合ラインにおける金型交換など段取り替え時間短縮のための金型と金型交換のシステム製品などへの展開である。多能工の複数連鎖業務を担当するアイデアは人的資源のみでなく機械・工具・設備全体へ応用できる。業務連鎖の統合は顧客にとってサプライチェーンのストックポイント削減に大きく貢献する。多能工による複数の機械操作を可能にする利点は、工程ごとの稼働率を平準化して人数を削減し生産性を上げることだけではなく、連鎖する複数の業務を一人で担当することでストックポイントのない流れ生産を可能にする。

この考え方は生産財メーカーにとっての事業機会を広げるのに役立つ。生産システムの柔軟性は製品のライフサイクルが短縮化している産業ではきわめて重要になってきている。急速な需要の立ち上がり、製品ライフサイクル終焉のソフトランディングによる大量の陳腐化在庫の回避などは、ほとんどの製造業にとってのサプライチェーン課題である。

金型・工具・工作機械などの生産財メーカーが顧客のサプライチェーンを産業別にパターン化し、顧客視点に立った単純で柔軟な生産システムを提供する戦略は、周辺の産業に大きな再編成を促すだろう。あるメーカーにとってサプライチェーン周辺への事業機会の広がりは周辺の生産財メーカーにとっては脅威である。ここにもゲームのルールが突然変わって競争相手がどこに現れるか分からない、サプラチェーン時代の大競争時代を予感させる要因が潜んでいる。

第二の視点、すなわち生産財そのものの生産販売のサプライチェーンは通常個別の一品生産である。

金型も工作機械の製造原価も人件費が50〜60%を占める労働集約型の製品であり、ソフトウェア製品や土建工事と同じコスト構造をもっている。金型などの製品の製造から販売までの経費を下げるもっとも重要な戦略はサプライチェーンを流れるスピード、すなわちスループットを上げることである。原価のなかで人件費や設備費などはスピードによって削減される。1か月50台生産から100台に増産することでこれらの固定費は半減する。そしてこの速度の増大はサプライチェーンの連鎖業務の同期化によって、在庫を削減することで可能になる。すなわち在庫は付加価値のつかない滞留時間であり在庫の多さがリードタイムを長くしていることを理解する必要がある。

また、サプラチェーン上の連鎖する業務間の仕掛在庫は労務費などの出費を伴う経費が在庫資産に変換されて滞留する資産である。リードタイムの長さ、または工期の対競合上の優位差は仕掛かり在庫(または未成工事支出金)の回転スピードの差になって企業の収益力の格差となる。これはキャッシュフローのスピードに影響し、運転資金上の制約の差になって企業の経営体質の優劣に繋がる。生産財メーカーにとってはサプライチェーンを通過する時間短縮はコストを下げ運転資金を減らすばかりでなく、時間ベースの市場競争にも反映されインターネットなどによるグローバルな大競争時代に勝者と敗者を分けるだろう。

生産財メーカーの経営体質向上は製品の品質・技術力は当然ながらサプライチェーン視点から見ると全体最適につながる熟練、ボトルネックを認識するアウトソーシングの巧みなプロジェクトマネジメントが大競争市場で事業機会を広げるであろう。そして勝者はますます強くなり、サプライチェーン時代のアジャイル(俊敏)な動きに遅れる企業は生き残りが困難になってくるのではないか。

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