デフレ不況と大競争時代の生き残り必須科目ベンチマーキング

株式会社21世紀ものづくり日本>>SCM投稿記事>>サプライチェーンそれぞれの選択

サプライチェーンそれぞれの選択

第1章サプライチェーンの中でのポジショニング

デフレ不況と大競争時代の
生き残り必須科目ベンチマーキング

市場や競争相手が限られているゲームでは護送船団で周囲をみて流れに従うのがリスクの少ない選択であった。今、消費不況時代は全体需要(食物)が減っているところに異業種・全世界からの競争者(飢えた狼)が生き残りを賭けて参入しあっている。どこから競争者が現れるか分からない時代である。1980年代において日本の製造業の強さが認識された国際競争はベンチマーキング(経営指標およびビジネスプロセス、プラクティスの比較)という手法が生み出され、現在国際的な格差が縮小する方向に向かっている。

ベンチマーキングは米国において1980年代に日本の製造業研究プロセスのなかでモデル化された手法である。このことを実証する以下の文章を引用する。

「日本人は、改善の実施にかかる時間の短縮や、製品を市場に提供するまでの時間削減の方法としてベンチマーキングの実践方法を製品やプロセス開発に適用してきた。ポール・ハウエルはこういっている。‘日本人はベンチマーキング、つまり各産業での最高の企業を徹底的に分析することに関して抜きん出ている。そして彼らは継続的にパフォーマンスを向上しつづけ、やがて日本の製品とサービスを世界最高のものにまで仕上げるにいたったのである’」(『戦略的ベンチマーキング』、グレゴリー・H・ワトソン著、ダイアモンド社、なおグレゴリー・ワトソン氏はゼロックス社でベンチマーキングの手法を取り入れ米国で普及させた第一人者)

日本の多くの会社は自社と同じ成功事例にこだわり横並びの護送船団方式で業界の水準に遅れまいとして来た。その習慣が日本製の自動車・テレビなど世界最高のものを作り上げたことは事実である。しかしこの日本的な習慣がベンチマーキングなどと称して欧米の会社が体系化し、ボールドリッジ賞などの審査項目に取り上げるなどして一般的な理論武装がされている今、逆に日本の優位性がなくなってきたといえる。

現代産業は何処かで発見されたモデルが一般化された瞬間に全世界にベストプラクティスとして広まってしまう。トヨタのカンバンシステムもその方式をほかの日本企業が真似する前に、一般化されたモデルがGMやフォードで情報システムを駆使して利用されている。世界に誇った日本の自動車産業も、昨今の成熟経済のなかで優位性どころか単独での存在さえ危うくなってきているではないか。日産とルノー、ダイムラーとクライスラー、マツダとフォードなどの合従連衡に見られるように企業活動に国籍は関係なくなった。

世界に誇ったJITのトヨタさえ次世紀の自動車産業の存在基盤は何かを模索している。JITの延長にあるのがサプライチェーンマネジメント。そこで企業全体の指標であるキャッシュフローで見るとトヨタでさえフォード・GMに大きく引き離されている(フォード276億ドル、GM165億ドル、トヨタ67億ドル:97年、ソース:週間ダイヤモンド99・4・17)

サプライチェーンマネジメントを電子カンバンシステムであるとか、ベンチマーキングは日本の真似だとかいって軽視する態度をもつ日本企業は、グローバルなビジネス戦争の実態を知らずして今後大きく遅れる可能性がある。ベンチマーキングで卓越した技(ベストプラクティス)を取り入れる継続的な行動ルールを持ったグローバル企業が、ハングリー精神で一生懸命にやって成功したが次世代に行動ルールが引き継げないかつてのグローバル日本企業を負かすことは簡単である。

日本では官民での協力体制が弱くなる一方、アメリカやEUでは政府や学会の協力体制が強くなって来ている。

ベンチマーキングの重要なポイントは、企業間の格差を国境を超えて短時間で減少すること、またベンチマーキングを無視しているとたちまち井の中の蛙になってしまい、生き残りさえ難しくなることである。このことから、むしろ最低限の必須科目であろうといえるだろう。サプライチェーンマネジメントの指標である在庫回転率、リードタイム、在庫欠品率など収益性の元データ、キャッシュフローなど徹底的にベンチマーキングしてその格差のもとになっている原因を追求し、プラクティス(技)の開発を継続的に実行するルール作りまで行なうことが勝ち残りに不可欠になった。

製造業再編の生残りのポジションを見つけるために自社のコア・コンピタンスをベンチマーキングで実証しつつ定義することが客観的な戦略づくりに役立つ(図1)。

図1
photo