情報共有と自律分散の仕掛け

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SCMの可能性を求めて

第3章経営戦略としてのサプライチェーンマネジメントと成功の為のプラクテス

情報共有と自律分散の仕掛け

企業経営には「情報が共有化されているかどうか」と「情報を使って意思決定する役割分担が自律的分散の組織か中央集権の組織か」の二つの要因からその特徴を分類することが出来る。

まず情報は一箇所に集中化され、意思決定も中央集権で計画も決定もなされていれば全体の無駄もなく最も効率なシステムが設計できるのではないかということで、経営合理化やシステム化とは中央集権化だと考えるモデルが近代経営、そして政治社会の常識であった時代が長く続いた。

ところが自分勝手な行動が無秩序を生んで無駄を生んでいると認識し改革する動きが、全体主義・官僚主義・社会主義・大本営方式を生んで逆に社会全体に大きな無駄を生んでいることが20世紀の壮大な犠牲を伴う実験によって証明された。トヨタ生産方式の根本原理は中央の管理スタッフ(本社や生産管理者)を居候とみて現場で自律的に判断し行動する考え方である。

図31

全体の調整から入らないで個別の自己中心的な先行技術がデファクトとなり収益逓増のビジネスモデルを作った事例は沢山ある。デファクトのリレーショナル・データベースを開発したオラクルもPCのOSをデファクト化して急成長したビル・ゲイツのマイクロソフトもこれらの社会産業上のインフラとなるソフトウエア製品を多くの企業が共同で調整しながら作ったものではない。
各企業がかってに作らないで国際標準を公的機関で作るべきだ、などと言う意見に従っていたらソフト産業の進化は覚束ない。情報を公開(共有)した上で自律した個人や組織が全体を見た行動ルールに従って動くことが結果的に進化を促すことになる。

サプライチェーンとの関連で言えば小口多頻度の納入は顧客のわがままに答えるだけで社会的には大きな無駄があると考えてそのようなシステムを実現することを躊躇するか、共同配送やクロスドッキングを情報システムネットワークに取り入れることで顧客のわがままを効率よく実現する仕掛けを創造するかで各企業の業績格差は拡大する。
全体最適を言いながら全体の中枢神経のみで行動する組織と、全体情報は共有されながら現場の自律神経の創意工夫が組み込まれた組織では後者が圧倒的に強いはずだ。

図32

自律分散の組織であっても情報が共有化されず分断された状態で意思決定する組織も大きな問題を生むことをサプライチェーンマネジメントの面で実証したのがインダストリアル・ダイナミックスの創始者であるフォレスターである。
製造業・卸・小売など多段階のサプライチェーンにおいて下流の小売から発注情報として部分的に順次にしか伝わらない需要情報で供給業務を計画して行動すると需要の小さな変動が上流に行くほど拡大されてサプライチェーン上で過剰在庫と機会損失がいたるところでおこることをシミュレーションで実証したのは有名な話である。

又情報が共有されながら自律分散的判断を許容しないのは、衆知を生かしきれない官僚主義経営か、専制政治を行なう裸の王様となったトップが率いる中央集権経営だ。野球のプレイヤーが敵味方ともにゲームの状況情報を把握しているのに監督のみの独断でバントや盗塁の判断を選手に一方的に伝達してゲームに負けづづけることで「監督がアホだから」といってチームのマネジメントのまずさをを知らしめたプロ野球球団があった。

ここに示したように典型的類型を「情報」と「意思決定組織」の二つの切り口から分析すると自分の会社に当てはめて妙に納得される読者もいるのではないだろうか。実はこの4つの類型での1つである「情報共有と自律分散」の組織は実現がもっとも困難な理想論かもしれない。サプライチェーンでのシンクロナイゼーションが理想の生命的現象であるのと同じように。

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