サプライチェーンのモデリングの方法論と複雑適応制御系〈図22〉

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SCMの可能性を求めて

第2章複雑系メタファーで理解するサプライチェーンのダイナミックス

サプライチェーンのモデリングの方法論と
複雑適応制御系〈図22〉

サプライチェーンのモデルはビジネスという複雑な現象をコンピュータでモデル化しようとの試みである。
筆者はサンタフェ研究所で、遺伝的アルゴリズムの父といわれるジョン・ホランド博士の講演を聞く機会があった。博士によればサイエンスの方法論はモデル作りである。モデル作りのこつは詳細を削除し(Delete detailes)、重要な部分をハイライト(Select highlight)することである。この過程にビジョン・メタファーが重要な役割を果たす。

図22
例えばこのモデリングのメタファーに似顔絵がある。
重要な特徴をハイライトし、詳細を描かないことが人物の特徴をうまく表現するコツである。似顔絵の単純な線画のみで誰か識別できる場合がある。また、もう一つの事例が道路地図(ロードマップ)である。風景画や航空写真は山・川・町並みなどデテールなデジタル情報は膨大であるが、道路地図という、ドライブという制御の為のモデルでは「道」だけがハイライトされ、風景などの詳細は削除される。詳細を削除することと単なる近似はことなる。
制御と言う目的に合ったモデル化において、道路の幾何学的関係は近似ではなく詳細にハイライトされなければならないが、風景情報は制御の目的からみれば削除可能である。

サプライチェーンは複雑適応制御系のモデルで構築可能である。最新のサプライチェーン上の情報を入手して、モデル表現し、そのモデルで問題解決し(最適、もしは大きな間違いを犯さない)、実行する。その場その場でのサプライチェーン上の在庫情報・生産出荷・購入情報を入手して、そのモデル上で解決策を作り実行する。
その意思決定する制御システムは、サプライチェーン上で中央での集中制御ではなく、自律系の分散システムによる、自然なコントロールシステムが良い結果を生む。情報システムはこの制御系としての、情報入手(計測系)、モデル化機能、モデル上での問題解決を経て実行に移せるプラットフォームを整備する必要がある。

現在のところ、ERPがこの情報入手の計測系と実行系を、SCMが計測されたデータにもとついて最適な問題解決を行う制御系として役割分担を与えることで複雑適応系としてのモデル構築が可能であろう。経営の意思決定場面で情報技術が直接に生かされるようになったのがサプライチェーンマネジメントである。

第一回連載で述べたように、サプライチェーンマネジメントの源流となった経営プラテクスは生残りのスピード経営から来ている。この考え方を情報技術でモデル化し経営の差別化につなげるトレンドは始まったばかりであり、SCMの関連ソフトウエアの進化が進んでいくであろう。その為のモデル化のメタファーは次の進化・システム導入のコンセプト作りに有用である。
次回(最終回)はサプライチェーンマネジメントの標準的なプラクテスになっているコンセプトの紹介や代表的事例の解説、そして今後の可能性について考察を深めてみたい。

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