交通システム・旅行

株式会社21世紀ものづくり日本>>SCM投稿記事>>SCMの可能性を求めて

SCMの可能性を求めて

第2章複雑系メタファーで理解するサプライチェーンのダイナミックス

交通システム・旅行

我々がビジネスや私用で移動する交通機関として地下鉄・バス・路線・電車・タクシー・新幹線・飛行機・レンタカーなどがありダイヤでスケジュール化されているものを含めて複数の異なる移動手段の連鎖でつないで目的地に到着する。都会の雑踏での群集を構成する個々の人の流れはそれぞれの開始地点を持ちそれぞれの到着地点をもっている。

サプライチェーンを構成するオペレーションはたくさんあって製品によってどこからスタートしてどこで完了するかが決まってくる。もちろん同じ種類の製品でも納入される場所が違えば到着地点は様々である。

移動する交通機関の乗り継ぎがうまくいかないと我々は駅のホームや空港の待合室で仕掛在庫や製品在庫になって時間を消費する。交通手段を複数利用する移動はサプライチェーンのメタファーが成り立つ。待ち時間となる乗客が在庫であると認識するメタファーは在庫とは時間であるとの発想を容易にする。在庫となった「仕掛や製品の気持ち」になれば在庫とは付加価値の付かない(移動しない)時間のことだと理解できる。

乗り継ぎ時間がほとんどないような移動は交通システムこそが同期化された交通手段であるといえる。駅のプラットホームで次のダイヤを待っている時間は在庫として付加価値(目的地への移動)のつかない状態である。

図14
図14のリードタイムの構成要素に示したように旅行のメタファーでサプライチェーンのリードタイムを考察してみる。交通システムを乗り継いで(連鎖で)移動する場合に4つの時間から成り立っている。

第一にセットアップタイムで予約し乗車券購入時間などで準備時間で未だ移動していない時間である。第二はプロセスタイムであり実際に交通機関を利用して移動している時間であり、サプライチェーンでは加工や輸送など実際に付加価値がともなっている時間である。第三はキュータイムで現実での有限な数しかないフライトや列車の座席を待っている時間である。サプライチェーンでは能力制約下での工程能力の待ち時間である。定期便による輸送便でもコンテナのスペースに限りがあればそれ以上の積載量がある場合は次便を待つ間はキュータイムとなる。第四はウエートタイムで団体旅行の場合に10人で旅行する場合9人揃って1人来なければ9人は仕掛在庫となって待つのである。組立工程でパーツが揃わないとき、バッチ処理をするとき一定のバッチサイズが揃うまで、先に用意したパーツはウエートタイムを要する在庫となる。

以上交通システム・旅行のメタファーで容易にサプライチェーンのリードタイムを推定出来る。

この4つの時間要素の中で実際に付加価値のある時間、実際に移動している時間はプロセスタイムのみである。サプライチェーン上でのシンクロナイゼーションでスピードを向上するには同期化によってセットアップ時間を少なくし、交通システムのダイヤをみて座席数制約の中で最も乗り換え時間の少ない、同期化した交通手段のアレンジをすることが必要である。

またバッチサイズを少なくして時間を短縮するのは、団体旅行での人数を少なく可能な限り一人旅の時間短縮を目指し時間の価値を上げる。3人でタクシーにのるコスト節約と1人で移動する時間節約のビジネス上の価値を判断する必要がある。

サプライチェーンマネジメントはコストダウンによる利益増大ではなく時間による機会損失をなくし売上増大を狙うことで利益を上げることがより重要性であると見る。ロジスティクス(兵站)の戦略性は武器弾薬を低コストで運ぶ事よりも戦争相手より早く戦力が優位になるようにスピーディーに供給することにある。どんなに安くても敵より遅れて戦力を編成しても手遅れである。このメタファーは顧客が欲しいときに欲しいだけの量の製品をすばやく提供するロジスティクスが営業のコツであり、競合に対する競争力の大きなファクターであることと多いに関係している。ビジネスの勝負はキャッシュフローで決まる。コストや効率などの部分最適の指標では決まらない。

図15

図15のリードタイムとタッチタイムを上記4つのリードタイム要素を3区間の列車ダイヤで示す。限られたレール本数の制約の中で乗客への利便性を上げる為に各駅停車とノンストップの快速電車がある場合、移動するプロセスタイムのみのダイヤはノンストップの快速電車に相当する。

横軸が時間軸で縦軸が走行距離であり、S,Q,Wは準備時間、能力制約待ち時間、連結車両のバッチ待ち時間で空間上での移動が無い。列車ダイヤについて考察することはサプライチェーンのメタファーとして極めて有効である。

photo