モデリングの発想―メタファー(比喩)―

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SCMの可能性を求めて

第2章複雑系メタファーで理解するサプライチェーンのダイナミックス

モデリングの発想―メタファー(比喩)―

人類が歴史上獲得してきた知識は、事例の集積ではなく、抽象化されたモデルに凝縮されて幅広い分野に応用される。全く別々の現象を一つのモデルで記述することが新しい発見をする創造性に不可欠である。
カンバン方式は全く違う業界のスーパーマーケットの商品補充方式からの連想が一つの創造を生んだ。

ニュートンはリンゴの落下と天体の惑星運動現象の間に共通するメタファーを得て万有引力の法則を発見したという寓話がある。科学的法則の多くはメタファーによる。ニュートン力学は現象を説明する物理学として確立されているが、車やロケットの駆動力学だけでなく、流体や電磁気の現象を予測し自然現象を制御するプラクティスとなって体系化されている。

その基本原理は現代の代表的製品である自動車や、テレビ・洗濯機などの日用品から宇宙ロケットの設計に応用する工学のダイナミックスすなわち力学としてモデル化されている。かっては職人の経験的集大成であったものが多くの自然現象の間にある共通のメタファーがモデル化を可能にした。

このモデル化のことを形式知化とも言うようだ。工学的な設計とは様々な現象を説明する単純なモデルから新しい機能を持つ製品を設計する事である。モノマネのコピーと原則的モデルからの設計とはこのメタファーによるモデル化の発想を経ているかどうかで区別する必要がある。
日本経済が欧米をキャッチアップする時代には、モノマネ的事例集めが最優先されて来たと言える。今の日本経済の苦境は新しい発想を必要としている。サプライチェーンのメタファーは欧米で取り入れられたが、我々はさらにそれを発展させなければ日本経済は単に規模だけで質がともなわないことにもなりかねない。

サプライチェーンはサプライ(供給)業務の連鎖であり、供給業務の連鎖をうまくつないでスピードを上げることがサプライチェーンマネジメントの課題である。
チェーン(鎖)もメタファーであり、「サプライチェーンのスループットはそれぞれの供給業務のスピードの合計で決まるのではなく、一番遅い業務によって影響を受ける」というのは、「チェーンの強度は一つ一つの鎖の強度の合計ではなく最も弱い鎖の強度がチェーン全体の強度である」と同じモデルである。このようなモデルでの発想が出来ることによって他の分かりやすい現象で思考実験をして問題解決に役立てる事が出来る。

モマネすべき対象がなくても自社に特有の問題解決に役立てる事が出来るのである。このメタファーは極めて重要であり、複雑な現象を理解する為に問題を単純に整理し、アイデアを発想するのに欠かせない。メタファーでの思考実験を又もとの現象に戻して検証することを繰り返す。
サプライチェーンの構築にこのメタファーを使えるかどうかが大きなポイントになる。ERP/SCMの構築の方法論やツールはなんであれビジネスをメタファーで類推することで画期的な成功への道が開ける可能性があろう。

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